THNK一級建築士事務所BLOG/建築家・大阪・新築・リノベーション

大阪を拠点に住宅や福祉施設等の設計監理を行うTHNK一級建築士事務所のブログです。
新築・リノベーションの現場の様子や日常の活動を紹介しています。
「福祉医療建築の連携による住居改善研究会」の記念講演
 今回は、北が参加している特定非営利活動法人「福祉医療建築の連携による住居改善研究会」の例会の記念講演で、大阪市立大学 三浦研先生の講演に行ってきました。お話しされた中で、印象深かった2点の話を紹介します。

■個室ユニット特養の経緯と現在の状況

2002年にユニットケアが制度化され約10年経過し、取り巻く状況が変容してきている。導入時から熱が冷めて、いくつかの議論が起っている。

1.低所得者が入所できない。
2.従来型運営者の反発。
→ユニット型であっても、必ずしもよい事業所であるわけではない。従来型でもよい事業所もある。
3.介護従事者の確保が困難。
→リーマンショック前は、景気が良くて人員確保が課題だった。
4.制度化のパラドックス
→制度化することにより、よくない事業所も参入する。
5.地方分権一括化法案により、居室定員は参酌すべき基準となった。

1.については、従来型よりユニット型のほうが建設費が格段に高くなると考えがちであるが、実際には必ずしもそういうわけではない。

厚生労働省 国立保健医療科学院 井上由起子氏の研究によれば、1床あたりの延べ床面積は、
    従来型(10.65m2) 44.7m2/床
    ユニット型(13.2m2) 54.7m2/床
であり、差は10m2である。

建設費において、従来型の方が仮に坪単価5%安くなると見積もって、
    従来型(10.65m2) 1000万円/床
    ユニット型(13.2m2) 1300万円/床
となり、劇的に増えるわけではない。

これに対し、居室代として請求される金額は、
    従来型(10.65m2) 6万円/月
    ユニット型(13.2m2) 1万円/月
になっている。

これは、ユニット型に要求されている職員配置が、
    従来型 利用者2.52人:職員1人
    ユニット型 利用者2.04人:職員1人
とされており、この人件費を反映した介護報酬となっていないため、居住費で人件費をまかなっているという状況である。

建設費で見ると従来型もユニット型も大差はない。従来型は2002年以前に建設されたもので、多くは建設費の3/4程度の補助金があり、建設費は償還されているためこの金額で成立していると考えられる。

したがって、低所得者も入居できるようにするためには、1室あたりの面積を下げる(13.2m2→10.6m2)ほか、ユニット定員を増やす(10名→12名)ことが効果的である。

■高齢者住宅/施設の床のやわらかさ

老健や老人病院では、職員や入居者が運動靴などを履いている場合が多い。一方、小規模多機能やデイサービスでは、スリッパや靴下のことが多い。高齢者にとって、靴を履いて食事をしたりくつろぐという状況では、自宅であると感じることが難しいのではないだろうか。運動靴などになるのは、移動距離が長いことと床が固いことが起因していると考えられる。

床が固いと転倒したときに大腿骨骨折などにつながる可能性が高い。RCの床よりも二重床にしたり、木造などの場合、床の衝撃性は柔らかくなるという結果がでている。床が固くなるのは、車いすを前提にして、床に耐久性を求めてしまうためである。
座位を低く保つことにより、密度の高い居合わせ方が可能となり、車いすを使わない=ハイハイなどの移動を可能とすることができる。このためにも、木造のフローリングや畳などの柔らかい床が望まれる。

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以上が、三浦先生の講演の内容の一部です。いつも感心するのですが、三浦先生の講演では、すべて根拠となる数字が示されていて、納得させられます。
ちなみに、木造床のデータは、ほのぼの旭ヶ丘の家のデータもありました。柔らかいという結果が出ていました。木造の方が暖かみがあって家庭的だと普段感じていることが、数字に裏付けられると説得力が増していきます。
| 高齢者住宅 | 20:15 | - | - |
地域とつながる宅老所 下村恵美子さん講演
宅老所の草分け的な存在である「よりあい」を営んでいらっしゃる下村恵美子さんの講演を聞いてきました。宅老所は「住み慣れた生活の中で、通うことも泊まることも気軽にできる小規模で家庭的な」場所として、地域のお年寄りを支える存在です。下村さんは介護保険の始まるずっと前の1991年に始められました。
日中は14,5人のお年寄りを顔なじみのスタッフやボランティアさんで支えています。小規模多機能居宅介護事業所は、こうした宅老所がモデルとなり2006年から制度化されたものです。

宅老所「よりあい」はとても地域の人から頼りにされ、安心感を与える存在になりましたが、その一方で事業所だけで地域の高齢化を支えることに限界を感じていらっしゃいました。そこで、7年前から地域を巻き込み、一緒に考えてもらうことを始めたそうです。
講演ではNHKで紹介されたときの映像を拝見しました。認知症で徘徊する母親とその娘さんとスタッフで、近所の商店街などを廻り、「もし一人で歩いていたら声をかけて宅老所に連絡をください」とビラを配って歩く。事業所だけでは支えきれないお年寄りを抱えると地域にSOSを出し、布団店の店主に夜間の付き添いを手伝ってもらうなど。

「地域とつながる」、よく言われることですが、具体的に何をするのかを考えると頭を抱えます。ひとつひとつの問題を具体的に地域に提示し一緒に考えていく、という下村さんのスタンスは、現実的な方法で得心しました。

高齢者を支える現場の方々の職業倫理や思想、信念を感じることができました。建築の立場からも一緒に考えていけるとよいなと思っています。

下村さんの著書:
九八歳の妊娠―宅老所よりあい物語 [単行本]
下村 恵美子 (著)+谷川俊太郎(詩) 雲母書房 2001年

| 高齢者住宅 | 20:20 | - | - |
福祉用具を使用する環境として住宅をとらえる
週末に「福祉用具を使用する環境として住宅をとらえる」というテーマで行われた研究会に参加して来ました。
これは特定非営利活動法人福祉医療建築の連携による住居改善研究会が行っています。
作業療法士の山下協子さんが前半は住宅改造と共によく使われる福祉用具(テクニカルエイド)の説明や機器選びの注意点を説明され、後半は実際にトイレでの車椅子の移動や浴室での動作について実演しながら理解するというものでした。

特に参考になったのは 
・(生活機能構造モデルに入っている)環境因子の重要性
・排泄しやすい姿勢、男女別
・症状により有効な便器高さ(高低)が違う
・ギャッジベッドの危険性
・杖の種類(場合によっては手摺設置より便利かも)
・車椅子の重心、安定性
・車椅子のアプローチ場所、移乗、本人の状況との関係
・浴室のバスボード、浴槽の背もたれの角度による
・バスシートによって立ちやすくなる場合もある
・浴室出入り手摺の位置、体の向き
・便所の立上りにつかう縦手すり位置は現在の推奨寸法よりも遠い(つま先+15cm程度)
・手摺を持って(押して)立つときに力が入る頭の位置(スペース必要)

多くの症状の方に関わってるということだけあって様々なパターンを話しておられましたが、
改めてその人の状況や話をよく聞いて対応することが重要と言っておられたのが印象的です。
| 高齢者住宅 | 02:37 | - | - |
住宅改修の相談など
金曜日に吹田市へ住宅改修の相談に伺いました。
万博の時期に造成された宅地に建てた築35年の住宅でした。
80才をこえて一人で住まわれているお母さんを気遣う娘さんからの相談です。
お母さんは耳が遠くはなっているのですが、生活動作はしっかりされています。しかし実は、地盤の影響で台所周りが傾いてきていたり、断熱がなく冬はとても寒いという悩みがあるらしいのです。
改めて調査して今後の使い方も見越した改修の検討を行うことになると思います。

その後、店舗の改修の施工に関するトラブルの話を聞く機会があったりして、構造、断熱などの環境設計、そして監理の大切さを考えさせられる日でした。
| 高齢者住宅 | 18:14 | - | - |
適合高専賃ゆいまーる伊川谷の見学
先日、適合高齢者専用賃貸住宅「ゆいま〜る伊川谷」の見学に行ってきました。
株式会社コミュニティネットが運営する高専賃で1階には食堂と小規模多機能居宅介護事業所と訪問看護と介護ステーションが併設されています。
社団法人コミュニティネットワーク協会のホームページ
「ゆいま〜る」とはたすけあいを意味する沖縄の言葉だそうです。

賃貸は
入居費用が家賃の一括前払いで
1298万円(28.98屐法3428万円(66.46屐
月々の管理費が
1人入居55,000円
2人入居82,500円

10年以内に契約終了の時は返還金制度があるとのことなので
一括前払金を120ヶ月で割ると10.8万円/月となりそれに管理費を足すと
16.3万円/月と別途、食事代や介護費用などとなります。

入居状況としては
2009年10月開設で現在72戸中71戸予約済みで
2010年春くらいまでに入居が落ち着いてきたとのことです。
入居者からは「価格が安い」「余分な施設がないのがいい」という声が聞かれるようです。

建設前から入居希望者での懇談会が開かれていて、入居後も運営懇談会が開かれているとのことです。他にも伊川谷通信という通信など、入居者が主体的に運営やイベントに関わられているそうです。


外観。1階には小規模多機能と訪問看護と介護のステーションが入っている

食堂。地域の販売所から新鮮な野菜を買って出しているそう

談話室。入居者の方が持ち寄った本が並んでいる

1階に掲示板があり、安否確認のため新聞を取りに来た際など印をつけるルールがある
| 高齢者住宅 | 19:19 | - | - |
バリアフリー2009
4/16〜18までインテックス大阪で開かれていたバリアフリー2009に最終日に行ってきました。
印象としては福祉器具はそれほど目新しいものはなかったですが、講演については活かせる話がたくさんあって有意義なものになりました。


床座で使える立ち上がり手すりということですが、軽くシンプルに作られていました。

講演で配布されていた小冊子ですが、住宅改修に関するチェックポイントがよくまとめられていました。

講演については箇条書きで記録しておきます。

溝口千恵子氏 住宅改修などにおけるポイント
・いきなり手摺り設置、段差解消ではなく、日常生活や意識についてヒアリングから必要なことを顕在化すること。
・玄関の上り框のバリアフリー化をしておきたい。
・単純な動線とする。
・水周りスペースに余裕を取りたい。
・車椅子のためと言わずに通路を広くとる。車椅子になったら施設に行くと言う人が多いがそれが本心とは限らない。
・ヒートショック目安として10℃の温度差
・結局照明を消してしまうので、できるだけ自然光で明るく。自分の影を段差と見間違って事故の原因になったことがあった。
・玄関のバリアフリー化で靴をどこで脱いでどこに散らばるか。
・寝室に押し入れトイレ作るとトイレまでが近くなり評判良い。
・脱衣室と浴室の狭さのカバーを3枚引き戸でカバーする。
・浴室改修のときにTOTOの幅せま浴槽(70cm)をよく使う。
・福祉のカタログでは(簡易な)自動消火器載っているが意外に建築のカタログではなく知られていない。
・改修においても今しておかないといけないことと将来的な準備(下地)の2段階で考える方がよい。
・耐震補強と一緒にバリアフリー化効率よい。
・クロス張替え時に下地が見えるの合板下地にしておくのも効率よい。

茨城大学 齋藤芳徳氏 浴室の計画について
・普通にみえること
・施設でも集団ケアから個別ケアに。
→1人の入浴に関わる人が6人から2人(1人)に。
・脱衣室も個別化した方が裸でいる時間が減ってよい。
・広すぎる浴室は使われ方によってヒートショック可能性。
・スタッフ少人数で個別化

近畿大学 山口健太郎氏 環境移行などについて
・福祉に対する熱さが欠けてきた?妥協ではなく原点回帰で取り組む
・現在の身体機能別の施設のありかたはどうか?
・年齢により環境移行(施設入居などで周りの環境がガラッと変わること)
・施設と家のギャップを埋める必要性
・介護付きマンションなど重度になったらまた引越し?2度も必要か。

事例
・きらくえん倶楽部
・かじやの里の新兵衛さん
・サポートセンター美沢
・大畑の家

・小さな複合施設での風呂などの設備の共用は有効
・(大畑の家の)個室独立玄関は家族に好評だった。

大阪市立大学 三浦研氏 高専賃と複合的なサービスについて
・いままでのケアプランではプログラムに柔軟性がなく夜が不安ということを背景に24時間対応で柔軟な小規模多機能が登場。
・小規模事例大阪市住吉区「きずな」

在宅が難しい例
・重度。家族同居前提になる
・主に男性で生活支援(家事、食事)が必要になってくる場合
・1人が不安という場合
・家族や事業所の在宅に対する強い意志がない
など。

高専賃ポイント
・介護サービスのように利用権契約ではなく賃借契約である。
→よって原則認知症等介護度によって追い出されることはない。

高専賃とデイサービスの組み合わせの場合
・夜の不安
・LSA(コンシェルジュ)的存在は?その人数によって質変わってくる。

高専賃と小規模多機能の組み合わせの場合
・メリットとして職員の兼務(勤務外で)
・適合高専賃では他地域からの転居での小規模多機能受けられない可能性がある。住所地特例は相互の市町村の合意によりOKな場合もある。
・事業者により利用者の抱え込みで良い場合と悪い場合

適合高専賃でケアハウス的事業
・介護度低いと成り立たない

外部サービス利用型特定施設
・これからで柔軟性と継続性
・小規模多機能使えない(ケアマネ重複)


| 高齢者住宅 | 21:31 | - | - |
老後の住まいは?−高専賃の見学より
3/30に堺市に新しくできたペガサスロイヤルリゾート石津という高齢者専用賃貸住宅(高専賃)の見学に行きました。
地上7階建てで、1階にデイサービスや診療所などがあり、2階以上は1戸当たり25平方メートルのワンルームマンションといった構成でした。
住戸内での高齢者への配慮というと居室にナースコールが付いていたり、トイレは引き戸となっていたりという感じでした。廊下、トイレ、浴室なども普通のワンルームサイズなので車椅子の方が居住するのは難しそうでした。
また一人での生活ができることが前提ということなので終の住処ともならなさそうでした。


モニター付きのインターホンとナースコール

気になる家賃ですが
入居金(保証金)250,000円
家賃  70,000円
管理費 45,000円
ワンルームマンションと考えると高いです。安心代がいくらか?
理想を描いたというより、建物は無駄もなく現実的な事業という印象です。


そもそも高齢者専用賃貸住宅(高専賃)とは
「高齢者の入居を拒まない『高齢者円滑入居賃貸住宅』のうち、専ら高齢者を賃借人とする賃貸住宅」ということでハード的な基準はなく、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」で定められたものです。
但し、適合高専賃といわれる要件があって
1.各戸25平方メートル以上
2.各戸が台所、便所、洗面所、浴室、収納を備えている
3.住居前払いに家賃に関する保全措置を講じている
4.食事、排泄、入浴、洗濯、掃除、健康管理などのサービスを行っている

上記を満たしていると、通常4のサービスを提供していると「有料老人ホーム」として届出義務が生じるところがそれが不要になるため、新築の高専賃はほぼこの要件を基準に設計されているようです。

建築基準法上の用途も
有料老人ホーム−児童福祉施設等
適合高専賃  −共同住宅
と違ってきます。それにより有料老人ホームの方が内装制限、階段、非常用進入口などの基準が厳しくなります。

また高専賃とよく似たもので「高優賃(高齢者向け優賃賃貸住宅)」があります。これは高専賃の中でもある一定の質を満たしたものに対して整備費用の補助などが行われているものです。
その主な認定基準としては
・5戸以上
・1戸あたり25平方メートル以上
・耐火構造または準耐火構造
・各戸台所、便所、洗面、浴室、収納
・手すりなど高齢者向きの住宅基準
・緊急対応のサービス
・10年以上管理、公正な入居者選定、計画的修繕など
・60歳以上で単身などの入居資格
となっています。
補助金により建設費の3分の2が出ますが、それだけ行政の財政により整備は進んでいないようです。

高齢者住宅財団のHPに詳しく説明されています。
財団法人高齢者住宅財団
http://www.koujuuzai.or.jp/index.html
| 高齢者住宅 | 23:00 | - | - |
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